HDR (ハイダイナミックレンジ) ハイビジョン映像

■HDR (ハイダイナミックレンジ) ハイビジョン映像とは?

HDR (ハイダイナミックレンジ) ハイビジョン映像とは、通常の映像の輝度情報より広い範囲の輝度情報を持っている映像を示します。2007年現在ではHDR処理はHDRI(ハイダイナミックレンジ画像 : High Dynamic Range Image)としてPhotomatixやPhotoshop CS2/CS3などで扱うことができます。静止画ではPhotomatixやPhotoshop CS2/CS3で処理できますが、映像ではHDR処理を行えるものがありません(ハイエンドではあるのかもしれませんが、個人レベルでは見た事がない)。Adobe Premiere ProやFinal Cut Proなどでも処理することができません。
それ以上に撮影時に困難を伴うという事もありますので、HDR (ハイダイナミックレンジ) ハイビジョン映像が普及するというか、広く見られるようになる可能性は当面ないでしょう。そもそも、静止画の場合でも明るさ (EV) の異なる画像を最低2枚、通常は3枚撮影し、それを合成しなければなりません。映像の場合は、どうしても撮影対象が動いてしまうわけですから、明るさを変えて同時撮影する事自体が非常に難しいことになります。カメラを平行または垂直に並べて撮影しても、画角や位置がずれてしまい、HDR合成処理を行うとずれた部分が半透明状態になり期待通りの映像を得る事は難しいでしょう(実際にやってみましたが、この方法では駄目でした)。

とりあえず、CANON XH A1を使って無理矢理HDR処理を行った映像のサンプルが以下のものです。この映像を見るにはQuickTimeが必要です。
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知らない人が見ると、普通の映像に見えてしまうかもしれません。人間の目は結構性能が良いのです。カメラで撮影した事がある人であれば実際には、このような撮影映像にはならない事が分かるでしょう。
1番は昼間(午前10〜11時)に撮影したものです。通常であれば、青い空と鐘付き堂が、このようになることはありません(鐘付き堂にライトを当てれば別ですが)。
2番目は夕方、日が沈んでから撮影したものです。この場合でも空と鐘付き堂が、このように映る事はありえません。日が沈んでしまっているため、鐘付き堂の部分は、細かい部分が失われてしまっています。
5番目のものは夕方に撮影したものですが、太陽が雲に若干隠れたりしているせいか、かなりちらつきます。Photoshopなどで個別に処理を行えば、ある程度は軽減できるものと思われます。
HDR処理ではMacOS Xであっても搭載しているCPUがPowerPCかXeon (CoreDuo) かによって処理結果が異なります。PowerPCの方が色は明るめに再現され、Xeon (CoreDuo) の場合は、コントラストが強くなる傾向にあります (3番がXeon、4番がPowerPC)。このような違いは3DCGソフトでも存在しネットワークレンダリングで異なるCPUが混在すると結果が異なってしまうことがあります (例えばBryceは、ネットワークレンダリング結果がかなり違う) 。
上記サンプルのHDR (ハイダイナミックレンジ) ハイビジョン映像の5番は2枚合成ですが、4枚合成にすると以下のような画像になります。


撮影した輝度によっては以下のように中間輝度がおかしくなってしまうこともあります。


また、中間輝度の選択によっても以下のように結果が異なります。



どのような映像にするかは好みによりますが、2枚合成であれば割と目で見た感じに近くなります。3枚合成だと、ちょっと独特の雰囲気になります。これは通常のHDR画像と同じ事になります。

■Photomatix と Photoshop CS2/CS3

HDR処理が行える代表的なアプリケーションとしてはPhotomatixPhotoshop CS2/CS3があります。Photoshop CS2は残念ながらHDR (ハイダイナミックレンジ) ハイビジョン映像の作成には使えません。これは単純に機能不足によるものです。その点、Photoshop CS3では改良が施されていますが、静止画なら良いのですがバッチ処理/アクション処理に問題があり、これも全く使い物になりません。
結局、Photomatix のProバージョンを使うことになるのですが、これも映像処理に関しては全く考慮されていないため、複数処理を行うと248枚あたりで落ちてしまったり、それよりも少ない枚数で落ちてしまったりします。もっともMacOS X版特有の現象かもしれませんが、2の8乗に近いあたりで落ちるのでプログラム側の問題の可能性が高いでしょう。

また、このような処理を行わせるためにAdobe AfterEffectsなども必要です。前段階の処理としては他にもスクリプトを作成し、それを実行させた後にやっとHDR処理が行える状態になります。おおよそMacPro (Xeon 3GHz) であっても、30秒の映像作成に諸々で3〜4時間ほどかかります。それでも、これまでとは違う映像が見られるのであれば、やってみると面白いでしょう。